イニシュモア島の風と石灰岩
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ロッサヴィールから出るフェリーは、大抵ディーゼルの排気ガスと湿ったウールの匂いが混じっている。ゴールウェイ湾の中間地点に差し掛かる頃には、大西洋の荒波が船首を叩き、日帰り観光客たちは昨夜飲んだ3杯目のギネスを後悔し始めるのがお決まりのパターンだ。私が船を降りたとき、まつ毛には塩がこびりつき、チェーンの鳴らないまともな自転車を死ぬほど欲していた。イニシュモア島に快適さを求めてはいけない。ここは、陸地が「もうここで終わりだ」と決めたような、ヨーロッパの剥き出しでギザギザした端っこなのだ。手入れされた芝生やカクテルメニューが目当てなら、本土に留まっておいたほうがいい。
世界の果て
イニシュモアは、海に放り出された巨大な石灰岩の塊だ。灰色で平坦、そして空から見れば巨大なクモの巣のように見える、総延長数千キロもの石積みの壁が縦横無尽に走っている。空気は泥炭を焼く匂いと、腐った海藻の香りで満ちている。ここの住人たちは第一言語としてアイルランド語を話すが、風向きを教えてくれるときは英語に切り替えてくれる。
この島は、歯に砂が混じり、ブーツが泥だらけになるのを厭わない人間のための場所だ。少々の雨など気にしないハイカーや、物理的な壁のように押し寄せる向かい風に立ち向かえるサイクリストに向いている。休暇に五つ星ホテルやショッピングモールが必要なら、ここに来れば後悔するだろう。リゾートもなければ、スパもない。あるのは岩と海だけだ。
大西洋が牙を剥かない時
イニシュモアを訪れるベストシーズンは5月か6月だ。石灰岩の割れ目から高山植物が顔を出し、太陽もそれなりに姿を見せてくれる。日は長く、暗闇で道に迷う心配をせずに島の端まで探索するのに十分な光がある。
7月と8月は混雑する。毎朝、フェリーが数百人の日帰り客をキルロナンへと吐き出し、メインロードはふらつく自転車と観光馬車でカオスな状態になる。もしこの時期に来るなら、必ず一泊することだ。午後5時に最終便の船が出た後、島はやっと静寂を取り戻す。冬は全く別の怪物だ。ほとんどの店が閉まり、窓を揺らすほどの強風が吹き荒れ、海は怒り狂う。孤独を愛するなら最高だが、極厚のコートと大量の本を持ってくる必要がある。
断崖と冷たい海
ドゥーン・エンガスはこの島最大の目玉だが、それには理由がある。大西洋に向かって90メートル以上切り立った断崖の縁に、先史時代の石造りの要塞が鎮座している。安全柵なんてものはない。突風が吹いたときに縁に近づきすぎて落ちるような馬鹿がいても、それは自業自得だ。この石灰岩の断崖の圧倒的なスケールを前にすると、他のすべてがちっぽけに思えてくる。
それから「ワームホール」と呼ばれるポル・ナ・ペーストがある。まるでレーザーで切り抜いたかのような、天然の長方形のプールだ。そこへ行くにはゴツゴツした岩場をよじ登る必要があるので、ビーチサンダルで行こうなんて思わないこと。潮の加減が良ければ、水が巨大な肺のように出入りする光景が見られる。灰色の岩の世界に飽きたら、キルマーヴィ・ビーチへ行くといい。砂は白く、海は南国のように見えるが、実際は氷水のように冷たい。手足の感覚を1時間ほど失いたければ、ぜひ飛び込んでみてほしい。
岩の島への足
ほとんどの人間は、ゴールウェイ市街から車で1時間ほどのロッサヴィールからフェリーに乗る。市内からは港へのシャトルバスが出ている。船旅は約40分だ。クレア州から来るならドゥーリンから船が出るが、あそこの海域は船酔いすることで有名だから覚悟しておいたほうがいい。
金に余裕があって船が嫌いなら、アラン航空の小型プロペラ機がコネマラ空港から飛んでいる。わずか10分のフライトだが、空から見る島の格子状の石壁は絶景だ。速くて、騒がしくて、フェリーよりもずっと刺激的だ。
二つの車輪か自分の足か
車を持ち込もうなんて考えないことだ。島は狭く、道は細い。未舗装の道で迷うことこそが、この島の醍醐味の半分なのだから。キルロナンのフェリー乗り場を降りれば、すぐにレンタル自転車屋が並んでいるのが見える。タイヤのしっかりしたマウンテンバイクを選べ。道は砂利だらけで、穴ぼこだらけだ。
島内を巡るローカルバスもある。土砂降りの日にはいいが、それでは最高の景色を見逃すことになる。歩くのが、小さな廃墟や北海岸の岩場でくつろぐアザラシの群れを見つける一番の方法だ。ただし、足元には注意しろ。石灰岩は濡れると滑りやすく、岩の隙間は足首を折るのに十分な深さがある。
バックパックを置く場所
メインの村であるキルロナンに滞在する人が多い。パブや島で唯一のスーパーに近く、便利だが、日中は少々騒がしい。静かさを求めるなら、西側のキルマーヴィ方面にあるB&Bやホステルを探すといい。
西側に泊まれば、フェリーの荷下ろしの音ではなく、波の音で目が覚める。より暗く、静かで、まさに世界の果てにいる気分を味わえる。ビーチの近くにはグランピング施設もある。まともなベッドで寝ながら、サバイバル気分を味わいたいなら悪くない選択肢だ。
パイントと獲れたての魚
イニシュモアの食事はシンプルだ。フィッシュ・アンド・チップス、ムール貝、そして濃厚なシーフードチャウダー。キルロナンの「ジョー・ワッティーズ」に行けば、しっかりした食事とライブミュージックが楽しめる。ここのギネスはロンドンやニューヨークで飲むより旨い。輸送距離が短く、空気に潮気が混じっているからだろう。
まともなメイン料理で15〜20ユーロは覚悟しておけ。安くはないが、離島で安さを求めるのは筋違いだ。水道水は飲めるが、少し泥炭のような独特の味がすることがある。夜の楽しみはパブに集約されている。クラブなんてものはない。木製のベンチに座り、フィドルやティン・ホイッスルの音に負けない大声で語り合うのがここのスタイルだ。
生存戦略とネット環境
小さな店では今でも現金が一番だ。キルロナンにATMはあるが、混雑する週末には現金が底をついたり、故障したりするのがお約束だ。数日間を乗り切れるだけのユーロを持っていくこと。
携帯の電波は意外にも島の大半で入るが、断崖の下などに潜り込むと圏外になる。ほとんどのパブやホステルにはWi-Fiがあるが、高速光回線なんて期待してはいけない。地元の店は夕方6時頃には閉まってしまうので、スナックや備品は日が沈む前に買い揃えておくこと。もしトラブルに巻き込まれたら、キルロナンに診療所がある。だが、深刻な事態になれば本土まで空輸されることになる。
ミニバスを回避しろ
最大の失敗は、ミニバスのツアーについていくことだ。彼らは皆、同じ時間に同じ3か所のスポットを巡る。正午にみんながドゥーン・エンガスの入り口に群がっている間、島の端にある「セブン・チャーチズ(七つの教会)」へ行ってみろ。修道院の廃墟や古いハイクロス(高十字架)があるが、大抵は誰もいない。
もう一つのコツは、港へ戻る際にメインロードを避けることだ。海岸沿いの下の道を通れ。アザラシのコロニーを通り過ぎ、岸辺で錆びついた古い難破船を見ることができる。時間はかかるが、レンタル自転車や馬の糞を5秒おきに避ける必要はない。イニシュモアの醍醐味は、風以外に何もない石灰岩の上に一人で立つことにある。静かな隅っこに目を向ければ、なぜ人々が数千年もこの岩にしがみついて生きてきたのか、その理由がわかるはずだ。