ヤオノーイ島はローギアで
マノー桟橋でロングテールボートを降りた瞬間、濡れたタオルのような湿気に襲われた。タイムシェアを売りつける客引きも、安いウォッカのバケツもない。聞こえるのは遠くのトラクターの音、漂うのは干物と軽油の匂い。プラスチックの小屋の下に座っていた男に300バーツを払い、ボロいホンダ・クリックを借りた。荷物を足元に括り付け、北へ向かう。5分もしないうちに、道を横切るヤギの群れのためにブレーキを踏む羽目になった。これこそが、もう存在しないと誰もが言っているタイの姿だ。
島の性格と向いている人
ヤオノーイ島は、磨き上げられすぎたプーケットの狂騒や、ライレイの岩壁に群がる観光客への解毒剤だ。ここは漁業と天然ゴムの採取を中心に生活が回る、素朴なムスリムの島。ハッピーアワーなんてものはない。空気感はゆっくりで、埃っぽく、潔いほどにローカルだ。
向いている人: サンラウンジャーよりもハンモックを選ぶ旅行者。スクーターで細い舗装路を走り、プラスチックのテーブルで辛いマッサマンカレーを食い、田んぼの上を飛ぶサイチョウを眺めるのが好きなら、ここを気に入るはずだ。
避けるべき人: 目の前にエメラルドグリーンの海と白砂のビーチがなきゃ嫌だというなら、やめておいたほうがいい。ここの海は潮の満ち引きが激しく、泥が混じっていることも多い。深夜まで遊びたいとか、高級ブランドの買い物をしたいなら、本土に留まるべきだ。
季節のリズムと訪問時期
島はアンダマン海の標準的なリズムに従っている。11月から4月が乾季だ。1月に来たことがあるが、空は突き抜けるような青で、バイクで走っていれば暑さも耐えられるレベルだった。
5月と10月のショルダーシーズンは一種の賭けだ。午後に激しいスコールに見舞われるが、宿泊費は半額になり、北部の道は完全に独り占めできる。泥が嫌いなら8月と9月は避けること。内陸へ続く土の道は滑りやすい赤土に変わり、一瞬でスクーターから放り出されることになる。
外せない沿岸スポットとランドマーク
島の見どころは東海岸に集まっているが、「見どころ」と言っても派手なものじゃない。
パサイ・ビーチ: ここがメインのエリアだ。干潮時は泥干潟になるので泳ぐには向かないが、冷えたビールを片手に、夕暮れ時、パンガー湾の奇岩が紫に染まっていくのを眺めるには最高の場所だ。
北の果て: 舗装が途切れるまでメインロードを北上しろ。ジャングルの中を抜ける土の道が、名前もない小さな入り江へと続いている。これこそが手付かずの自然だ。木々は生い茂り、猿の声が響き、リゾートなんて一つも見当たらない。
田んぼと水牛: 島の中心部には広大な田園地帯が広がっている。背後に巨大な石灰岩の絶壁を背負い、緑の田んぼの真ん中に水牛が佇んでいる光景は、ヤオノーイ島を象徴する景色だ。
フェリー航路とアクセス
ここに来るのは、遠征というほどではないが、観光バスを遠ざけるには十分な手間がかかる。
プーケットからはバンロン桟橋へ向かえ。金を節約したいなら、プーケットタウンからローカルなソンテウを使うこと。スピードボートはほぼ1時間おきに出ていて、所要時間は約30分。ロングテールボートはもっと安く、45分から1時間かかるが、こちらのほうが情緒があっていい。
クラビからはタレーン桟橋だ。ここからのロングテールボートは最高で、巨大な岩の間を縫うように走り、島の南側にあるマノー桟橋に到着する。
現地での交通手段
スクーターを借りろ。それしかない。島は歩くには広すぎるし、安い自転車で回るには坂が多すぎる。鉄の肺を持っていない限りは。
125ccのバイクで1日200から300バーツが相場だ。桟橋を出る前にブレーキを確認すること。数十年ものの年季が入った代物も混じっている。道は概ね舗装されていて状態も悪くないが、落ちているヤシの葉や、たまに横切るヘビには注意が必要だ。信号はない。ヘルメットの着用は一応義務付けられているし、地元の子どもたちがコーナーを攻めてくるのを見れば、自分から被りたくなるはずだ。
拠点の選び方
タカオ: バックパッカーや一人旅ならここだ。北寄りに位置し、静かで、安いコテージやローカルなカフェがいくつかある。島の鼓動をより近くに感じられる場所だ。
パサイ: 夜9時過ぎまで開いている数少ないバーやレストランの徒歩圏内にいたいなら、ここがいい。便利だが、ヤオノーイの基準で言えば少し「観光地化」されている。
内陸部: ゴム園の中にひっそりと佇むホームステイ先がいくつかある。雄鶏の声で目覚め、地元の人々のリアルな生活を見たいなら、ここに泊まるべきだ。
ローカルグルメと夜のリズム
ここの料理は南部タイ料理だ。つまり、涙が出るほど辛い。
ナイトマーケット: セブンイレブンの近くにあるメインの村で開催される。ここで安くて最高のフライドチキンとカオニャオ(もち米)を手に入れろ。バナナと卵のロティを売っている屋台を探すのも忘れずに。
食堂とカフェ: ほとんどが家族経営だ。メニューが少なく、地元客が食べている店を選べ。西洋風すぎる店は避けろ。大したことないハンバーガーに3倍の値段を払うことになる。
アルコール: 忘れないでほしいが、ここはムスリムの島だ。地元の食堂では酒は出さない。それを尊重すること。海岸沿いにはチャンビールやシンハーを出す「旅行者向けのバー」もいくつかあるが、レイブパーティーなんて期待しないことだ。
必須のサバイバルチップス
現金: メインの村(マノー地区)にATMがいくつかある。大抵は動いているが、過信は禁物だ。滞在分をカバーできるだけのタイバーツを持っていくこと。小さな店や食堂は現金のみだ。
通信: AISとTrueMoveの4Gは島の大半で安定している。ジャングルの道でも、地図を確認するくらいの電波は入った。
リズム: 全てが早い。朝市は午前9時には終わる。夜10時には島は静まり返る。自分の体内時計を調整しないと、一日の最高の瞬間を逃すことになる。
秘密の逃避行 vs 混雑スポット
過大評価: 人混みが嫌いなら、パッケージ化された「4島巡り」ツアーなんてわざわざ行く必要はない。プーケットからスピードボートで押し寄せた200人の観光客と一緒にビーチに放り出されるだけだ。
秘密の逃避行: 満潮時にタカオからカヤックを借りて、すぐ沖にある小島まで漕ぎ出すか、西側のマングローブ林へ向かえ。不気味なほど静かで、おそらく自分一人しかいないはずだ。それから、ジャングルの北にある「ビッグ・ツリー(Ao Kian)」も探してみてほしい。巨大なタベクの木を前にすると、自分の小ささを実感できる。最高にいい気分だ。